〜シリコンとシリコーン、63歳で初めて知った現場の真実〜
はじめに ― きっかけは「投資の勉強」だった
株式投資を始めて半年。半導体関連株を理解したくて、AIに聞いてみました。 「半導体ってどうやって作られるの?」
たったそれだけの質問が、まさかの展開を生むことになりました。今回はその会話の流れをそのままお伝えしたいと思います。投資の話のつもりが、気づけば自分が30年間働いてきた製造業の現場の話に繋がっていました。63歳で初めて気づいたこと、AIとの対話でしか気づけなかったことを包み隠さず書いてみます。
原料が「砂」だったとは
AIの答えは予想外の一言から始まりました。 「半導体の原料は砂です。正確には珪砂(けいしゃ)という砂に含まれるシリコン(ケイ素)です」
砂? あの砂浜の砂? 正直、最初は半信半疑でした。あの精密な電子部品が砂から作られるとは。でも話を聞いていくと、納得できました。
珪砂(砂)
↓ 超高純度に精製(純度99.9999999%)
単結晶インゴット(円柱状の大きな結晶)
↓ 薄くスライス・鏡面研磨
ウェーハ(直径300mmの薄い円盤)
↓ 回路を焼き付ける・切り出す
半導体チップ(スマホやAIを動かす心臓部)
砂から始まって、数ヶ月かけてあの薄い円盤になる。まさに現代の錬金術です。
30年越しの勘違い。シリコンとシリコーン
話の途中で、私はある「聞き間違い」をしました。私が仕事で使っていた「シリコン」の話をしたところ、AIから丁寧な訂正が入ったのです。
「tanikoさん、実はシリコンとシリコーンは別物なんです」
えっ? 同じじゃないの? 30年以上、プラスチック加工の現場に携わってきた私にとって、これは衝撃でした。
| 項目 | シリコーン(仕事用) | シリコン(半導体用) |
| 英語表記 | Silicone | Silicon |
| 状態 | 液体・ゴム・ペースト | 固体(結晶) |
| 主成分 | Si+炭素・酸素など | Si(ほぼ純粋) |
| 用途 | 潤滑・シール・離型 | 半導体・太陽電池 |
| 原料の出発点 | 珪砂(同じ砂) | 珪砂(同じ砂) |
私が現場で「シリコンスプレー」と呼んでいたものは、正確には「シリコーン」だったのです。
なぜシリコーンが熱に強く、製品を傷めないのか。その理由を、まさか投資の勉強中にAIから教わることになるとは思いませんでした。現場の経験と、新しい知識がガッチリと結びついた瞬間でした。
精度の次元は違えど、本質は同じ「ものづくり」
半導体の世界を知れば知るほど、その「異常なまでの精度」に驚かされます。
私がいたプラスチック加工の世界も、0.1ミリ単位の精度を求める厳しい現場でした。しかし、半導体はそのさらに先、ナノ単位(1ミリの100万分の1)の世界です。
| 比較項目 | プラスチック加工 | シリコンウェーハ製造 |
| 精度 | ±0.1mm単位 | ±0.001mm(ナノ)単位 |
| 確認方法 | 目視・ノギス | 電子顕微鏡 |
| 現場の改善 | 日々の積み重ね | 日々の積み重ね |
| 暗黙知の蓄積 | ベテランの感覚 | ベテランの感覚 |
| ものづくりの本質 | 同じ | 同じ |
「砂をそこまで『高純度(イレブンナイン!)』にするのに、どれだけの技術が詰まっているんだ……」
ここで私は、世界シェアトップを走る信越化学工業の強みの正体を知りました。印象的だったのは、社長の「塩ビもシリコンウエハも他社とほぼ同じ製法で作っている。凡事徹底の積み重ねこそが、わが社の強み」という言葉です。
一部の開発者が突破口を開いても、それを量産し、歩留まり(良品率)を上げていくのは、日々の「現場力」です。マニュアル通りにやるだけでは、いつか他社に追い抜かれる。「停滞は衰退である」という緊張感の中で、各工程の細かな改善が積み重なり、それが誰にも真似できない「暗黙知」へと昇華していくのです。
しかし同時に、この強さは「脆さ」とも表裏一体です。 暗黙知が「人」に宿っているがゆえに、ベテランの引退や技術継承が大きな課題になります。日本のものづくりが持つこの「強さと脆さ」を、半導体を通して改めて突きつけられた気がしました。
「連鎖構造」で見えてきた投資の設計図
今回の対話で最大の収穫は、半導体関連株がなぜ動くのかという「連鎖構造」が頭に入ったことです。
NVIDIA(AI半導体の設計・需要の震源地)
↓ 製造を発注
TSMC(世界最先端チップの製造・世界シェア約71%)
↓ 装置を発注
東京エレクトロン・ディスコ・SCREEN(製造装置)
↓ 素材を発注
信越化学・SUMCO・JSR・トクヤマ(素材・消耗材料)
↓
日本の半導体関連株が動く
「NVIDIAがくしゃみをすれば、日本の素材株が風邪をひく」という構造がハッキリ見えました。
投資家として一段階上がる
今日の気づきを経て、私の投資スタイルを以下のように「設計」することに決めました。
- なぜ買うのか: どの「連鎖」の部分に期待しているのか?
- どこで買うのか(入り口): 雰囲気ではなく、チャートとニュースを分析。
- どこで逃げるか(出口・損切り): 感情を挟まず、事前に決めたルールを徹底。
おわりに ― 63歳、AIは最高の「家庭教師」
もし一人で本を読んでいたら、途中で飽きていたかもしれません。でもAIとの対話なら、自分のプラスチック加工の経験と結びつけて、納得しながら進むことができます。
「30年やってきた仕事の知識が、最新の半導体投資に役立つ」 この感覚が、たまらなく楽しいのです。
これからもAIを使い倒し、昭和世代ならではの視点で投資を楽しんでいきたいと思います。

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